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組織マネジメントの全体像 ~『ゼミナール経営学入門』より~

『ゼミナール経営学入門』の第9章をまとめた。

 

  • 組織と個人、経営の働きかけ

 まずこの章の冒頭では「経営とは、人々の協働を促し、率い、そして協働全体の舵取りをすることなのである」と述べられている。1章でも触れられていたが、企業の究極的目標である利益を得るためには、顧客に魅力を感じてもらい(reasonable)、さらに財サービスの提供に費やしたコスト以上の価格を支払ってもらう(profitable)、ことが必要である。そしてその ”reasonable” かつ ”profitable” な状態を作り出すために、従業員が協力して働くこと、すなわち協働が必要となる。ここで「顧客に魅力を感じてもらう」という意味で “reasonable” という単語を選択したが、それは「妥当な、適度な、合理的な、良心的な、正当の、手ごろな」といった意味で、顧客が納得してその合理的な財サービスを選択し、その正当/妥当な対価として手ごろな価格を支払うという、購買に関する一連の流れにフィットする単語だと考える。

 以上より経営において外部環境との関わり方を意味する戦略とともに、自社の内部、すなわち組織を適切にマネジメントすることが、非常に重要な意味を持つことは理解いただけただろう。

 

  • 従業員の行動と経営の働きかけ

 この本でも述べられているが、組織のマネジメントは「組織の業績を良好な水準に保つため」に必要である。「業績」というのは、利益、成長、雇用の維持、社会貢献など様々なものを指すが、とにかく業績というものが組織マネジメントのゴールである。しかし企業が人の集合体である以上、マネジメントできる範囲には限界がある。個々の従業員は、日々考えていることや仕事に求めていることなど、とても個性的である。それをある方向に強制的に向けて、頑張らせるというマネジメント方法は、いささか無理がある。個人の意思決定の範囲は組織の役割に制約されるが、その範囲内では自由に情報交換を行い、行動を選択できるという意味でかなりの自由度があるといえる。したがって冒頭でも書いたが、経営やマネジメントがすべきことは、従業員をときには引っ張り、ときには支えることで、協力して働いてもらうことである。

 

 以下の図のように、経営の働きかけをこの本では、戦略、経営システム、理念/人の3つから成るとしている。この3つの方法も様々な具体的な方法から成るが、3つの方法でしか経営は個人に働きかけることができないということも意味している。もちろんトップから影響を与えるだけでなく、現場の従業員同士が相互に影響を与え合って、うまく協働を成り立たせることもある。またOutputの行動計画の欄に「方向」と「大きさ」というのはベクトルに例えたもので、要するに「どこに向かってどれだけ頑張るか」ということを示す。しかし頭で考えた計画と実際の行動(業務行動や学習)には大きな隔たりがある。しかし実際の行動を起こさなければ業績も出ないので、その飛躍をマネジメントすることも必要だろう。

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 このように図化して、組織の業績が生まれるプロセスを分解していくと、自社がどの部分に問題を抱えているかということが整理されるのではないだろうか。経営のフレームワークだけで企業の業績を改善することはできないが、その手助けにはなるのかもしれない。