"innovative"なものの条件
夏らしく蝉が鳴いている。
朝からプールに出かける小学生を見ていて、夏だなーと思った。
いつも雲ばかりでは飽きるので、今日は一昨日港区で撮った坂を。
(撮影者:私)
すごく暑い日で思考が麻痺しそうになったが、坂を歩いているとやはり爽快感や達成感があった。また行きたい。
さて今日は"innovative"なものとは、どういったものなのかということを考えてみたい。
AppleのiPhoneなどはその典型としてよく扱われる。既存の技術を組み合わせて、非常にcoolなプロダクトを作り、またApp Storeなどのエコシステムを作ったという、ハード面でもソフト面でも社会に大きなインパクトを与えたことは間違いない。
ここではそういった"innovative"なものの条件として
「驚き×共感」
という視点を提示したい。
まず掛け算になっているのは、一方が十分であっても、もう一方が欠如していては全体として"innovative"ではないということだ。バランスが重要だ。
ではまず「驚き」について。これに関してはあまり説明する必要もないと思うが、今までと同じような安心感のあるものでは、それを新たに世に送り出す意味があまりない。今までのものと違っていることがイノベーションの一つの条件である。イノベーションについて「昨日までとは違う行動によって、成果を生むこと」と定義する本もある。
もちろん資本主義がお金の流れを作るために過剰に「差異」を生み出している、という批判もあると思う。製品のマイナーチェンジによって購買意欲を刺激するようなものに対しては当てはまるだろうが、本質的に優れた製品やサービスには「感動」がある。それを私は「驚き」と呼ぶ。
次に「共感」についてである。これが必要なことは少し意外かもしれない。しかしもし完全に驚きしかなければ、それはただのオタク向けの製品である。
特にその製品が生み出された背景にある「問題意識」が多くの人に共有されており、納得できるできるものであることが重要である。もちろんその問題に気付いている人は少ないと思うが、その製品が問題を解決した後になって「確かに~は問題だった」みたいな、腑に落ちる感覚があるはずである。
現キリンビバレッジ社長の佐藤章氏(「FIRE」「生茶」の製品開発で有名)も著書で同様のことを述べている。
彼は「商品開発の掟」を14か条書いているが、その1つ目がサプライズ(心地よい驚き)である。この「心地よい」というのがキーワードだ。消費者が飲料を選ぶ時間は2秒といわれている(私は例外かも…)が、人は基本的にリスク回避的である。ミクロ経済学が想定する人間もそうである。不確実性も大嫌いである。それによるバイアスを扱っているのが、最近話題の行動経済学である。
話が逸れたが、いくら素晴らしい驚きや今までとは違う体験を提供するものであっても、「共感」を呼ばなければまず手に取られて、使用されて、親しみを感じてもらうことは難しい。「心地よい」とはうまい表現である。
以上のように「驚き×共感」という視点を身に付けると、また違う世界が見えるかもしれない。それだけで自分の周囲にある「世界」は変わるのではないだろうか。
知は力なり。