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「イノベーション・オブ・ライフ」

初めまして、フクロウの部屋へようこそ。
このブログでは私が日々考えていることを、少しお話ししたいと思います。

 

第1回は「イノベーション・オブ・ライフ」と題して、お送りします。まずこのタイトルに見覚えのある方はいないでしょうか?

 

そうです。これはハーバードビジネススクール(HBS)教授のクレイトン・クリステンセン氏が、HBRに投稿された論文をもとに出版された本の題名です。

 

この本で彼は次のような質問を投げかけています。
「わたしたちはどうすれば次のことが確実にできるだろう?
・どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるだろう?
・どうすれば伴侶や家族、親族、親しい友人たちとの関係を、ゆるぎない幸せのよりどころにできるだろう?
・どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろう?」
イノベーション・オブ・ライフ』,クレイトン・M・クリステンセン

 

私たちは日々、勉学や仕事に励んでいます。その目的は人それぞれだと思いますが、根底にあるのは「人生をより良いものにする」ということだと思います。では「人生」とはどのようなものから成り立っているのでしょうか?

私は「人生」を「仕事」「家庭」「趣味」の3つに分解しました。

 

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まず仕事をより良くすることに関しては、様々な学問分野で研究が行われ、経営学、特に組織論、さらに最近では経済学において数多くの研究成果があります。これからも優れた研究がなされるでしょうし、それほど危惧する必要はありません。

 

次に趣味をより良くすることに関しては、かなり個人の関心(好き嫌い)によるところが大きく、他人がとやかく言う問題ではないと考えます。

 

では、家庭や日々の生活についてはどうでしょうか。
何らかの学問的裏付けのある知見があるでしょうか。

 

日常について「経験則」や「暗黙知」は数多くありますが、それを何らかの理論を用いて考察されることが少ないと、私は考えています。しかし、この「日常」こそがイノベーションの源ではないでしょうか。

例えば、安定した家庭があるからこそ、仕事でも自分の「持ち前」を発揮することができ、その結果として社会的に意義のある商品やサービスを生み出すことができます。さらにその商品・サービスを利用した人の人生がより良いものになれば、そこからまたイノベーションが起きます。

 

このようにそれぞれの個人が普段の生活にイノベーションを起こすことが、社会をより良いものにするのです。

 

そして私は以下の図のようにイノベーションが起こる部分を思考と行動に分け、”Innovative Idea”と”Innovative Action”と名付けます。この両輪をうまく回す必要があります。

 

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ではまず思考の部分です。私は今まで「イノベーション(innovation)」という言葉を多用してきましたが、「それってどういう意味で使っているの?」、という疑問があると思います。また「なんだか難しそう?本当に私にできるの?」と思われる方も多いと思います。さらに最近は「イノベーションのすすめ」みたいな本が書店に溢れており、私はちょっと胡散臭い感じもしています。

 

そこで原点である「そもそもイノベーションってなんぞや」という問いにもとづいて、少しイノベーションの定義を再考したいと思います。以下は定義の一例です。

イノベーション(英: innovation)とは、物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。一般には新しい技術の発明を指すと誤解されているが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指す。」(Wikipedia)

「科学的発見や技術的発明を洞察力と融合し発展させ、新たな社会的価値や経済的価値を生み出す革新」(第3期科学技術基本計画)

「単に新しい技術や製品をさす言葉ではなく、その結果、 新しい価値が生まれ、社会や暮らしによい変化をもたらすことを意味します。」(P&G)

「昨日までとは違う行動によって、成果を生むこと」(『イノベーションは日々の仕事のなかに』)

 

いかがでしょうか。まとめると「ただの技術革新だけでなく、それに基づいて新たな価値を生み出し、社会を改善する」という感じでしょうか。

このままでは「技術革新」「新たな価値」「社会に大きな変化」などという固い言葉があって、なんだか難しそうですし、日常にそんなものを起こすなんてハードルが高いです…

 

ということでここではもう少し分かりやすく
イノベーション=「ちょっとした工夫で、今までよりも少しだけ満足(Happy)を感じること」
という定義を採用したいと思います。

 

この考えは放送作家であり、最近ではくまモンの生みの親として有名な小山薫堂氏のアイデアとも通じます。彼は著作で「プチハッピーのミルフィーユ」という言葉を使っています。これは大きなHappyを得ることよりも、小さなHappyをミルフィーユのように積み重ねたほうが、全体の満足度が高くなるということです。
皆さんもご自身の経験から、直感的に納得していただけるのではないでしょうか。

 

実はこのことは行動経済学の知見を用いて説明することができます。といってもたいして難しい話ではないので、興味のある方は次回の記事をお楽しみに。
クリステンセン氏が述べるように、確かな理論には大きな力があるのです。

 

いかがでしたでしょうか。今回は「思考」の部分でイノベーションを定義してみました。少しでも理解が深まれば幸いです。それでは( `ー´)ノ

 

<参考文献・URL>
クレイトン・M・クリステンセン『イノベーション・オブ・ライフ』
小山薫堂『もったいない主義』
バディ・ミラー&トーマス・ウェデル=ウェデルスボルグ『イノベーションは日々の仕事のなかに』,2014,英治出版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa200601/column/007.htm
http://jp.pg.com/innovations/concept.jsp